Netflixで7月9日から配信がスタートした、恋愛リアリティーショー番組『ボーイフレンド』。日本で初めての”ゲイやバイセクシュアル男性による恋愛リアリティショーは、どのようにして実現に至ったのか ? 番組のプロデュースとキャスティングを務めたTaikiさんにお話を伺った 。
「 その夏、僕は彼に恋をした」――。Netflixで7月9日から配信がスタートした『ボーイフレンド』は、日本で初めての“ゲイやバイセクシュアル男性による恋愛リアリティショー”だ 。
海の近くに佇むビーチハウス「Green Room」に集まった9人の“ボーイズ”たち。ルールは「約1カ月間、共同生活をすること」と「コーヒートラックを皆で運営すること」の2つのみ―― 。
制作発表とともに話題になった本作は、どのようにして実現に至ったのか。BuzzFeed Japanは今回、番組のプロデュースとキャスティングを務めたTaikiさんにお話を伺った 。
( 聞き手:嘉島唯 )
「いいね、いいね」→「やっぱりうちでは…」
――Taikiさんは、モデル業のほかにマネジメントやイベントなどを行う事務所を運営されていますが、なぜ本作でプロデューサーとして企画に携わることになったのでしょうか ?
エグゼクティブ・プロデューサーの太田大さんとは昔から親交があって「いつか一緒に番組を作れたらいいですね」と話していたんですよ。僕自身、ゲイの当事者として「いつかゲイの恋愛リアリティーショーを作ってみたい!」と、ずっといろんな所で言っていました 。
ここから、太田さんが番組を企画立案されて、「本気で通しに行きます」とお電話をいただきまして。「じゃあ僕は人を集めます」と動き始めました。それが2022年の秋です 。
――他の会社から似たような話は来なかったのでしょうか ?
言っていいのかな … … (笑)。“なくはなかった”です。でも、最初こそ「いいね、いいね」と反応をもらうものの、最終的には「やっぱりうちでは無理そう」と返ってくる。Netflixさんでようやく実現にこぎつけました 。
じゃあ、自分で探せばよくない? 半年かけて集めたメンバー
――『ボーイフレンド』は、ビーチハウス「Green Room」で9人が1カ月間の共同生活を送る内容です。参加者を集めるのは難しくなかったですか ?
参加者9人をそろえるのに、なんだかんだ半年以上かかりました。最初は、SNSで出演者の募集を始めたんですけど、結構苦戦しまして … … 。途中から僕自身がSNS経由で直接オファーしたり、対面でスカウトしたりしました。――なぜでしょう ?
最初の募集で来てくれた方々は、年齢こそバラバラではあったものの、似ている人たちが多かった。誰がいいとか悪いとかではなくて、似た人たちが集まってしまうと、番組を見た人たちの中でイメージが固定されてしまうので … … じゃあ、自分で探せば良くない ? と思い、あちこちで声をかけました。僕の友人も出てます 。
――そうなんですね ! ?
GOGOダンサーのユーサクは有名人なので以前から接点がありましたし、アランは古くからの友人で、キャストを募集開始したときも「めっちゃいい企画じゃん!」と反応してくれました 。
たまたまアランとクラブで会った時に「そういえば、あの企画ってどうなってんの?」と聞かれて「まだ募集中」と返したら「俺、彼氏と別れたから出られるよ!」とキラキラした表情で自己推薦(笑)。もちろん、繋がりがあるからといって優遇するわけではなくて、対面だったりリモートだったり各々面接をして決めました 。
――外見や職業もそうですが、バイセクシュアルの方がいたり、家族にカミングアウトしていない方がいたりと、さまざまな方がそろってましたね 。
カミングアウト済みの人たちだけで番組を進めた方がいいかもしれないと思っていたのですが、当事者によっても状況は全然違うというリアルな姿を届けることも大事だと思って 。
とはいえ「番組に出演する=カミングアウトに近い行為」なので、家族やご友人、同僚などの多くの人が番組を通して知る可能性もある。その懸念点やサポート体制については、本人を交えて何度も何度も話し合いました 。
もっと大きな声で話して!(笑)
――実際に出来上がった映像を見て、予想外だったことはありましたか ?
想定外のことはなかったですね。かなりナチュラルで、自分が普段見ている現実に近い。強いて言うなら、全体的におとなしいメンバーが集まったので、序盤はみんなの声が小さい(笑)。――ユーサクさんの登場はクラブで煌びやかでしたけど … 確かにみなさんおとなしいというか 。
そうそう。傍から見ていて「もっと大きな声で話そうよ」と言いたくなったり、自分が登場して話を回す役をしなくてはいけないかも、と思うほどに静かで大人しくて(笑 ) 。
ただ、企画の根底にゲイに対する偏った印象を変えたいという思いもあったので、これはこれで良かった気がします。テレビだと、わかりやすさもあって「ゲイ=オネエ」みたいな取り上げ方も多いと思いますが、実際は違うタイプの人たちも多い 。
あと、恋愛リアリティーショーであるような「過剰に頑張ってしまう設定」も、目指す方向性とは違うと思っていたので、結果としてリアルなものになったように思います 。
途中から明るいメンバーが来てくれたので雰囲気が変わりましたし、みんなも少しずつ生活に慣れたのか、表情が豊かになっていく。そこも見どころのひとつかなと思っています 。
――スタジオMCにはMEGUMさん、ホラン千秋さん、青山テルマさん、ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさん、徳井義実さんが参加されていますが、このキャスティングにはTaikiさんは参加されたのでしょうか ?
いえ、Netflixさんから「この中で推したい人はいますか?」とヒアリングはありましたけれど、皆さん安心感のある方なので、特に意見をすることはなかったです 。
特にMEGUMIさんは、ゲイの先輩方の中にいらっしゃる姿を度々お見かけしていたので「是非に」とお願いしました。ドリアンさんは昔から付き合いがあって、信頼できる方だと思ってましたし、トークも上手。それにドラァグクイーンでありながら素顔を出して活躍している所も今っぽいなと思い、推薦させていただきました。でも、それぐらいですね 。
「そもそも僕たちは『ボーイズ』って言っていいんだっけ?」
――リアリティーショーへの参加は、名声を獲得する一方で誹謗中傷やストレスも付き物です。どうやって参加者のケアをしているのでしょう ?
日本で初めての企画だったので、参加者のみんなは自分の描かれ方がわからないし、面白おかしくされるのではないかと不安だったと思います。その不安要素は絶対に取り除きたいと考えていたので、Netflixさんと、また参加者のみなさんとはかなり話し合いました 。
不安要素は家庭環境、人間関係、仕事とか … … 本当に人それぞれ。お互い話したいことは納得するまで話した上で出演していただいたと思っています。一人につき7回ほど打ち合わせをしました 。
撮影中も、個人アカウントでもこまめに「調子はどう ? 大丈夫?」と連絡を取ってました。僕はお節介な気質があるので、もしかしたらしつこかったかも(笑 ) 。
LINEグループもありますし、いろいろなチャネルで相談できるような環境作りを心がけました。ほかにも、カウンセリング業務に従事する臨床心理士などの専門家とも連携する制度があるので、僕に言いにくいことがあっても外部への相談窓口があるよという話もしていました。絶対に傷ついてほしくない 。
――エピソード1で各々のジェンダーアイデンティティ(性自認)について話し合っているのには驚きました。あれは筋書きがあったわけではないのですか ?
こちらから強要したり、誘導したりすることは一切したくなかったので、すべて本人たちに委ねました。初手で、メンバーの1人が「そもそも僕たちは『ボーイズ』って言っていいんだっけ?」という確認を最初にやってくれて、彼らの適切な認識と丁寧で自然なコミュニケーションの仕方に驚き、感動しました。――「ボーイズ」に違和感を覚える参加者がいる可能性もある 。
ですね。僕たちは面接したので知ってますけど、参加者の共通項は「男性が恋愛対象である」だけで、それ以上のことはお互い知らない状態でしたから 。
この確認から、恋愛対象の話になるんですけど、バイセクシュアルのメンバーが手を挙げる 。
セクシュアリティについても、撮影前から本人たちと話し合い、公表するかしないかも委ねていました。繰り返しになりますけど、いろいろなタイプの人を知ってもらいたい気持ちがあったので、バイセクシュアルの2人が素直に自分を表現してくれたことにもとても感謝しています 。
――センシティブな話題に触れつつも、20代独特のこじらせ具合や、食費でのいざこざなど、恋愛以外の部分も細かくスポットが当てられていましたね 。
そうですね。セクシュアリティも大事ですけど、1人の人間ってことを伝えたかった 。
「 ボーイフレンド」という言葉は「彼氏」以外にも「男友達」という意味もありますよね。恋愛リアリティーショーというと、どうしても恋愛を期待してしまうと思うんですけれど、それだけではない 。
鶏肉ひとつで揉めたり、落ち込んだりする。本当にありのままのボーイズたちを写してもらえた気がしてます。テレビやいろんなメディアで見てきたゲイの方々と「あれ、なんか違う?」と気付いてもらえるといいなと思っています 。
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